« イカの前うしろはどっち? | トップ | 痛い!美味しい!クラゲのお話 »
イカの親は子供に愛情いっぱい!
引き続き、イカ類のお話です。
イカの運動や呼吸に漏斗(ろうと)という管が働いていることをお話しましたが、その構造で面白いのが、消化と排泄です。 食道を通過した食べ物は、消化器で消化吸収され残りは直腸を通過し、漏斗近くの肛門から排泄されます。漏斗では、運動や呼吸によって常に海水が吐き出されていますので排出物はただちに体外に海水とともに洗い流されます。あら不思議!イカのトイレは水洗式なんですね! ほとんどのイカ類はきわめて成長が早く、寿命も約1年と短いものが多いのです。美イカ短命?そしてその一生にたった一回産卵し、死んじゃうのです。ちょっと短く悲しい人生(イカ生?)ですね! お魚のほとんどは、産卵の際にオス・メスが卵と精子を海中に放出し、受精しますが、イカの場合はちょっと変わった方法をとります。 オスは体内で精子をカプセルに詰め、そのカプセルを交接腕と言われるオス独特の腕で、メスの体に付着させます。この交接腕は、特徴がありオスを見分けたり種を分類できるのです。この交接方法はメスに付着したまま保存が可能で、産卵場所まで移動して受精もでき非常に効率的ですね! イカ類も子孫を残すために、様々な工夫と努力をしているのです。 コウイカなどコブシメは、卵を1個づつ硬い卵膜に包み、サンゴのすきまに産み付けて、捕食者から守ります。全ての腕の先をつぼめて、その中で大きな卵を送り出しテーブル珊瑚などに、腕の先を突っ込み1個づつ、ていねいに産みつけていく姿は、とても神聖に見え感動的です。松とうちゃんは沖縄ケラマや台湾で何度もそのシーンを観察し、その度に感動を覚えました! ヤリイカやアオリイカは、数十個の卵をゼラチン質の袋に入れ、数珠状にまるでソーセージを何本もぶら下げたように、岩の下などに産みつけます。やはりゼラチン質の袋が卵を守るんですね。海中では結構目立つのですが食べにくいのかお魚にはやられません。ちょうどこの季節、あちらこちらの海中でソーセージようの卵の袋がぶら下がっているのを観察できます。 コブシメの卵は、ゴルフボールくらいの大きさがあり、これは出来るだけ子供がその中で大きく強く育つ工夫です。またヤリイカやアオリイカは、ふ化してすぐ墨を吐いて逃げる機能を備えています。ふ化を待ち構えている捕食者から逃げる工夫をしているのですね!ふ化してまもなく、ちっちゃなイカがいっちょまえに墨を吐く姿はとても可愛らしいです。 ふ化した小さなイカは、動物プランクトンやエビ類の幼生や魚の稚魚などを食べて成長しますが、それぞれの海域で、それらの餌が豊富な時期を狙ってふ化させます。 少しでも多くの子孫を残そうと努力しているのですね! 生まれたばかりのハイハイできない人間の赤ちゃんをその子が自立し、社会で生きていけるように我々人間の親は愛情を持って子育てしますよね! イカたちの親は、生まれる子供が、ふ化して間もなくひとりで(1匹で?)生きていけるよう、自分の生涯の終わりをかけて最善の条件・環境を整え、子孫繁栄を願うのでしょうね!そして、ふ化したイカの子供はただちに約1年という短い人生(イカ生)を強く生きていくのですね! ここで松とうちゃんの大好きなスルメイカの生涯について簡単に紹介します。 比較的温暖な海域でふ化したイカは、関東近海などで春から初夏に、10cmくらいのムギイカと呼ばれる大きさに成長しそのあと海流に乗って北上します。 餌の豊富な北の海で大きく成長し、秋にはオス・メスともに南下。南下途中で交接が行われ、オスはいづことなく姿を消し、メスだけが産卵場へ到着産卵します。そのあとは、短い一生を終えます。本当にはかないんですね! 食べて美味しいスルメイカも、近年水揚げ量も横ばいのようですが、末永く共に生きるため漁業調整の他に生物学的研究に基づいた増やす工夫を人間もしなければならないのかも知れません。 松とうちゃんの大好きなスルメイカが少なくなっていくのは悲しすぎます! この生物講座を書きながら、生まれてすぐ『強く生きろ!』と願いを込めて産みつけるイカの親の愛情を感じました。読んでくれている皆さんはいかがでした? -お生物講座032- |